2016年の春から、ニホンアナグマを探しに里山へ通い始めました。あらかじめ都内の動物園で観察をしたり、園内の担当飼育員さんにいくつか問い合わせをしたりと簡単な予習をしたわけなのですが、本来彼らが暮らすフィールドに関しては手掛かりはありませんでしたので未知の領域です。
【ニホンアナグマとは】
日本の本州、四国、九州地域の里山に棲息しているイタチ科の動物。タヌキやハクビシンと間違われることが多いようですが、アナグマの分類は食肉目イタチ科アナグマ属、まったくの別種となります。夜行性で普段は人目に触れることが少なく、地中に穴を掘って住居にしているようです。調べれば調べるほど、なんだか可愛らしい。
まずは彼らのおうちである巣穴を探してみたい。そんなふうに思い立ち、なんとなくではありますが雰囲気が伝わる里山をいくつかピックアップして向かったわけです。巣穴探しについては、広いエリアを縫うような探し方ではなく、その日に探索可能な範囲を絞り込み、そのエリアをひとつひとつ確実に押さえていく方法を選択しました。辺りのさまざまなものを観察しながら、森の中を丁寧に歩き、時には藪を泳ぎながら進めていきます。

【ニホンアナグマの巣穴を探して感じた3つのこと】
その① 巣穴だけでなく地面の掘り返し跡にも目を向ける アナグマはミミズや昆虫の幼虫などを食べるため、その丈夫な爪と鼻で土を掘り返します。まったく手掛かりがなくゼロから始める場合には、この掘り返し跡が有効な手掛かりとなるはずです。意外にも人がよく通る林道脇などにも見られる場合があります。本格的な斜面探索や藪こぎなどは、それらが見つかった地点から始めても遅くはないかと思われます。
その② 資料に記載されている内容が全てではない たとえば巣穴は南東の斜面に作られることが多いと書いてあります。たしかにそういった事例が一般的なのかもしれませんが、だからといって南東以外の方角を切り捨ててしまうのは勿体ないものです。特にそれが低山ともいえないような丘陵地帯に近いエリアの場合はなおさらのようです。私が調査を行っている里山のエリアでは約30個の巣穴のうち半数以上は北向きなのです。

その③ 見つけた巣穴から、アナグマのさらなる「未知」が広がっていく
頭をひねりながら予測を立て、巣穴の在りかを想像しながら探索した結果が報われたときの喜びはなんともいえないものです。そして、なにより面白いのは、地中へと続くその巣穴の構造やそこでのアナグマの暮らしぶりは、現在ほとんど解明されていない状態なのです。そんなニホンアナグマの未解明な部分を感じることで、きっとよりいっそう彼らに心惹かれ、内側からさらなる興味が湧いてきてしまうことでしょう。今後も丁寧に調査をつづけながら、彼らの不思議な暮らしぶりを記事や写真作品として形にしてみたいと思います。
それから、最後にもうひとつ。広がる大規模な開発や道路網の発達による生息域の分断、交通事故などによるロードキル等の影響から、彼らの生息数は減少傾向にあります。そこには取り巻く様々な背景や問題があるかとは思うのですが、不要な場荒れや捕獲(猟対象も含め)を防ぐためにも、生息地の詳細を安易に拡散する行為などは控える配慮が必要不可欠かと思われます。
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